
僧帽弁閉鎖不全症は小型犬の心臓病のなかで最も多く発生します。
小型犬は病気がなくても、僧帽弁閉鎖不全症のリスクが有るとみなして、ACVIMステージ分類のステージAに該当します。
いわゆる弁膜症と同じ病気で、大動脈弁・僧帽弁・三尖弁・肺動脈弁と4ヶ所ある心臓の弁のどこかが悪くなると弁膜症と名前がつきます。なかでも犬では僧帽弁が特に悪くなりやすく、命に関わる可能性が高い場所なので僧帽弁閉鎖不全症(MR)と呼ばれます。
僧帽弁は扉のような役目をします。血液を全身に送り出すときに、弁で入口を塞いで出口へ一方通行に血液を送ります。その弁が変性して弁の噛み合わせが悪くなったり、支える糸(腱索)が切れてしまい弁が支えられなくなると、血液の逆流が生じます。
血液が逆流することで全身へ送り出す血液が減り、心臓に留まる血液が心臓をさらに大きくして負担を増やします。初期は無症状ですが、進行すると肺水腫などの心不全症状により命の危険があります。
病気のステージに合わせた適切な治療が必要ですが、根本的な治療は外科手術となります。
各ステージにより注意するべき事柄は異なります。きちんと診断を受けて適切な治療を相談しましょう。
ステージ分類
僧帽弁閉鎖不全症に対する手術
我々は人工心肺装置を用いた体外循環下心臓外科手術を実施しています。
心臓病で苦しむ動物に対してよりよい治療を提供するために人工心肺装置を導入し、体外循環下心臓手術を実施可能となりました。犬の心臓病の80%を占める僧帽弁閉鎖不全症に対する外科治療(僧帽弁修復術)も実施可能となりました
実際に僧帽弁修復術を受けていただいた症例の手術前後のエコー画像およびレントゲン画像です。手術前に認められた僧帽弁の逸脱は制御できており、僧帽弁逆流がほぼ消失しております
僧帽弁逆流を大幅に減少させたことにより、術後2週間の再診時には心臓サイズは縮小しておりました。手術前は肺水腫を繰り返し、息が苦しい状態であった子が、現在は呼吸状態にもんだいなく、ほとんど咳もしていないようです。手術時15歳7ヶ月齢で、もうすぐ17歳になろうとしていますが、今もとっても元気にしてくれています。
我々は僧帽弁閉鎖不全症に対する手術の他にも、三尖弁閉鎖不全症に対する三尖弁輪形成術、心房中隔欠損症や肺動脈弁狭窄症などの先天性心疾患に対する外科的治療も実施しております。心臓病でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。